2018/8/23
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高校野球とM君 |
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夏の甲子園が終わると、「夏も終わりだな…」という気持ちになります。 今年は、例年以上の酷暑で選手や応援している方たちは大変だったと思いますが、100回(凄いですね)という節目の大会にふさわしい盛り上がりだったのではないでしょうか? 優勝した大阪桐蔭高校や、旋風を巻き起こした金足農業高校など話題になった高校も多くありました。 節目の大会にふさわしく面白い大会になりましたが、その中でも、個人的に印象に残ったのは、三重県代表の白山高校でした。 白山高校という高校は、つい2年前まで県大会の予選すら1勝もできない(それまで10年連続初戦敗退とのこと)、いわゆる「弱小校(失礼!)」でした。 それにもかかわらず、今年は県の代表になり、球児ならだれもが夢見る甲子園の舞台に立つという快挙を成し遂げ、大会前の話題となっていました。 もちろん、想像もつかないような努力の積み重ねがあってこその快挙なのでしょうが、正直はたから見ると「こんなことってあり得るの?」という、それこそドラマか漫画のできごとのようにも感じました。 この白山高校の快挙をニュースで見て、ある生徒を思い出しました。 その生徒をM君とします。 M君は、高3の8月に塾に来ました。 通常高3生は、大学入試を前提として塾に通います。 ただ、M君は、「大学は考えていない。ただ、英語が本当に分からないから中1からやり直したい」と言います。 在籍している高校も、あまり大学入試を目指す生徒が多くない高校でしたし、本人の学力から考えても大学入試は現実的ではありません。 何しろ、高校でも英語をはじめ赤点がいくつかあるという状況でしたので。 教えてみても、本当にアルファベットは何とか書ける…というレベルです。 どうしようか…と思いましたが、とにかくI am から始めました。 入試を目的とはしていないので、とりあえず本人のペースに合わせて進めていましたが、10月になるころ、 「大学受験をしたいです」 と、いきなり相談してきました。 まだその時点では、ようやく三単現(中1)に入ったくらいでしたので当然無謀なチャレンジなのですが、とりあえず動機を聞いてみると 「ほかの高3生が一生懸命大学に向けて勉強している姿を見て、自分も努力して大学に行きたいと思うようになった」 とのこと。 しかも、どこでも良いというわけではなく、他の塾生が目指しているような、いわゆる「有名大学」にいきたいと。 状況を考えると本当に気の遠くなる話です。 そこでまず、 ・今年(現役)の合格は現実的ではないので、来年を目標にすること ・これまでほとんど勉強してこなかったので、まずは習慣をつけること ・焦らず基礎から進めること を納得してもらってカリキュラムを組みました。 正直なところ、「おそらくどこかで諦めるのでは?」と思っていました。 それまで殆ど勉強してこなかったのですから、過酷かつあまりにも先が遠い大学受験にM君が耐えうるとは考えられなかったのです。 しかし、1か月経っても2か月経っても、高校から帰宅するとすぐに塾に来て、ずっと勉強しています。 同級生が難関大学やセンター試験の過去問を解いている横で、中学生の単語を覚え、テキストを解いています。 焦ることもなく、誰かと自分を比較することもなく、黙々と。 M君は翌春、高校を卒業し、浪人生活に入りました。 引き続き塾に来ていますが、高校を卒業したことで朝から夜遅くまで塾の自習室にいるようになりました。 授業も、1学年下の現役生と一緒に受験対策の授業を受けることになります。 進学校の現役生と比べたら、まだ全く勉強が追い付いていません。 そのような状況でも、M君は焦ることなく腐ることなく黙々と淡々と、やるべきことをこなしていきます。 …夏が過ぎるころ、M君は、そのクラスでも一目置かれるほどの学力を身に着けていました。 1年前にappleも書けなかった彼が、進学校に通う生徒たちの誰よりも単語を知っているのです。 M君の経緯を知っている後輩たちは、一様に「M先輩を尊敬している」「M先輩が勉強している姿を見ると気持ちが引き締まる」と口にしていました。 1年前に同級生から影響を受けて受験を始めた彼が、今度は後輩たちに良い影響を与える存在になったのです。 翌春の受験では、第一志望だった私立トップの大学には残念ながら不合格でした。 しかし、1年半前に目標とした「有名大学」にはたくさん合格し、その中の一つに進学しました。 そのことを高校に報告しにいくと、彼を知る先生方は驚きを隠せなかったそうです。 それは当然です。 1年前に卒業すら危なかった生徒が、有名大学に受かったのですから。 …長くなりましたが、白山高校のニュースを見たときに、M君を思い出しました。 1年後、いや半年後にも、周囲が驚くほどの変化は遂げられるはずです。 偏差値を10や20伸ばすことだって、彼らが成し遂げたことに比べればそれほど難しくはないはずです。 「変わる」と決めること。 そしてそれを実行し、毎日継続していくこと。 M君のストーリーは、地味な毎日の積み重ねこそが、誰もが驚く華々しい結果につながることを教えてくれたように思います。 |
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