2023/10/14

暗記することについて

各中学では中間テストが行われています。
塾生が通っている近隣の中学では、土屋中・馬宮中・植水中では、昨日13日(金)に実施されました。
また、大宮西中と指扇中では週明けの16日(月)に行われます。
 
12日(木)に中2生のH君の振替授業を行ったときのこと。
H君は、夏休み前に入塾してきました。
入塾前に本人とお母様とも話をさせていただきましたが、どうしても暗記が苦手で、その場で何とか覚えたことも、テストになると出てこない・・・という悩みを抱えているようでした。
 
今回の振替授業では、テスト直前ということもあり理科を勉強したいと希望してきました。
理科は、ある程度暗記をしなければいけません。
「暗記が苦手」というH君がどのように取り組むのか、まずは静観して様子を見ていました。
 
H君は、学校のワークに赤で書き込んだ答えを、チェックシートで隠しながらひたすら覚えているようです。
そこで頃合いを見て声がけし、覚え終わったページをどれだけ覚えているか、確認をすることにしました。
 
H君は、(答えの部分を隠している状態の)ワークを見ながら、という形ならば、しっかり覚えています。
つまり、自分が暗記したときと同じ「風景」ならば答えがスラスラ出てくるのです。
そこで、今度はテキストを見ずに、私の方で問題を読み上げたりホワイトボードに書いたりしながら確認してみました。
すると・・・ワークを実際に見ながら解いたときと比べて、正答率は明らかに下がってしまっています。
 
どうして正答率が下がってしまったのか?
これは言うまでもなく、H君が「テキストの答えを順番に覚えていた」からです。
例えば、「酸化」という答えの次は「酸化物」というように。
当然ですが、テストでは言葉を変えて出題されますし、ましてテキストやワークと同じ順番で出題されることはほぼありません。
つまり、勉強(暗記)しているときとテストでは、全く違う「風景」になっています。
 
そこで、彼に次のことを聞きました。
「(2)の『酸化銅』という答えの問題文って、どういうことが書いてあったか大まかで良いから言える?」
それに対してH君は
「いえ、全く覚えてないです」
と、正直に答えてくれました。
 
そうなるとやることは決まります。
H君と、問題の意味を一つ一つ確認しながら、分からないことは説明し、「何を聞かれているか」を認識してもらって、答えと結びつけていきます。
答えは先に覚えていたH君ですが、問題文と組み合わせることの意義を知ってもらうために、(時間はかかりますが)必要な過程となります。
その後、時間をおいてから、どれくらい覚えているかを再度確認しました。
すると、全て完璧に答えが出てきました。
複雑な化学反応式もきちんと書けています。
聞いてみると、
「問題文を読むと答えが出てくるようになりました!」
と。
 
これは多くの生徒が陥る罠ですが、「覚える」ということは「問題文や出題の意図を理解する」こととセットでなければ、恐らくほとんど意味がありません。
ただ、暗記が苦手な生徒ほど、勉強に苦手意識がある生徒ほど、答えを覚えることが目的化してしまっている傾向にあります。
 
中高生にとって、日々の授業の中で覚えることが次から次へと出てきます。
更に、単語テストや確認テスト、小テスト・・・塾や学校で次々にテストが行われます。
そのような中で、短期的な結果を求めて「答えのみを覚える」方法をとる生徒が少なからずいることも良く分かります(そういった小テストは、ほぼ同じ形で出されることが多いですので)。
ただ、やはり、定期テストや入試ではその方法は通用しなくなってしまいます。
そうなると、その生徒の中に、「せっかく覚えたのにテストではできない・・・」と、マイナスの感情が芽生えてしまいます。
 
そもそも、H君もそうですが、答えを覚えられる生徒が、暗記が苦手ということはないのです。
それにもかかわらず、結果に結びつかないがために自信を無くしてしまうのは、もったいないことだと思います。
 
上記で紹介した暗記方法はもちろん有効ですが、時間もかかりますし、短期的な効果や結果には結びつきづらいかもしれません。
H君にとっても、この日授業内で体感したことが翌日のテストですぐに結果につながるか・・・それは難しいかもしれませんが、実は、行動面ですぐに変化があったと、翌日お母様からお電話で教えていただきました。
後日談になりますが、長くなりましたので、次のブログで紹介します。